ハリウッド映画に登場した日本刀

日本刀が登場する映画は、ハリウッドをはじめとする洋画にもたくさんあります。そのほとんどは架空の日本刀ですが、日本の歴史に対する幻想があるのか、とてもユニークかつファンタジックに描かれることもしばしば。日本人としては喜んでいいのか、突っ込みを入れるべきなのか悩ましいところです。ここで紹介する映画は、それぞれ見応えのある作品ばかりですので、映画鑑賞のひとつとして日本刀に注目してみてはいかがでしょうか。

紀元前6世紀の日本刀が活躍

ハイランダー/悪魔の戦士

1986年(昭和61年)のアメリカ・イギリス合作映画。「ラッセル・マルケイ」監督。

年を取ることもなく、首をはねられない限り永遠のときを生きる一族が「究極の宝」を求めて戦うファンタジー・アクション。

「ハイランダー」とは、スコットランド高地に住まう人々のことで、映画では不老不死の一族の名称にもなっています。「クリストファー・ランバート」演じる主人公コナーは、ある日、同じくハイランダーであるラミレスから一族の運命について教えられ、彼に師事することに。

この、「ショーン・コネリー」演じるラミレスの武器こそが、なんと日本刀。

しかもラミレスは2千年以上生きていて、紀元前6世紀に日本人の妻サキコの父親から日本刀「正宗」を譲り受けたと言うのです。

紀元前6世紀の正宗です!

映画では、古代刀剣の研究者でもある鑑識官が登場し、その時代に日本刀が存在するはずがないと語ります。ただ残念ながら追究もそこまで。

無理もありません。紀元前に作られた日本刀など説明できるはずがないのですから。

反りのある鎬造(しのぎづくり)の「太刀」が現れ、日本刀という言葉が初めて使われたのは平安時代中期です。そして、「平将門」(たいらのまさかど)が関東で反乱を起こした10世紀以降に広く普及しはじめます。

武家の台頭と共に、平安時代末期には日本刀の需要も高まり、原材料である良質な砂鉄が採れるなど作刀に適した地域に刀工達が集まりました。刀工達は互いに他の地域と交流しながら、一方では独自の技法を発展させ、これらの代表的な産地5ヵ所はのちに「五箇伝」(ごかでん)と呼ばれることとなります。

映画に名前の登場した「正宗」は、五箇伝のひとつ「相州伝」を代表する刀工です。

代表作として、最高傑作とも賞される「日向正宗」(ひゅうがまさむね)、皇室御物である「会津正宗」(あいづまさむね)「石田三成」の名にあやかり号された「石田正宗」(いしだまさむね)、脇指の傑作「九鬼正宗」(くきまさむね)などが現存しています。

石田正宗

石田正宗

数々の名刀を生み出した正宗が活躍したのは、鎌倉時代末期から南北朝時代初期。おおよそ15~16世紀です。紀元前6世紀とは2千年ほどの時間差があります。

映画では、刀工のトップブランドである正宗の名前を付けて、ラミレスの日本刀がいかに優れた武器なのかを表現したかったのですね。

復讐のパートナーは「ハンゾーソード」

キル・ビル

2003年(平成15年)のアメリカ映画。「クエンティン・タランティーノ」監督。

愛する夫とお腹の子供を殺された元殺し屋のザ・ブライドが、かつてのボス「ビル」と組織へ復讐するバイオレンス・アクション。

「ユマ・サーマン」演じる主人公のザ・ブライドが、復讐のために選んだ武器が日本刀でした。その日本刀を鍛えたのは、隠居して沖縄に暮らす刀鍛冶の「服部半蔵」。半蔵は、ザ・ブライドの腕を見込んで「ハンゾーソード」を授けます。

「服部半蔵が刀鍛冶?」

きっとそう思われたことでしょう。服部半蔵と言えば伊賀出身の忍者として知られていますから。この服部半蔵を名乗った人物はひとりではなく、代々当主が受け継ぐ名前でした。

最も有名なのは、2代目当主の「服部半蔵正成」(はっとりはんぞうまさなり/まさしげ)です。正成自身の忍者としての側面は薄く、武士として「徳川家康」に仕え、遠江掛川城攻略や、姉川の戦い、三方ヶ原の戦いなどで功績を上げています。

しかし、刀鍛冶であったという記録はありません。それでもクエンティン・タランティーノ監督は、服部半蔵を作品に登場させたかったようで、憧れの俳優である「千葉真一」に出演を依頼。テレビ時代劇「影の軍団」で千葉が演じていた服部半蔵と同じ役名にしたとのこと。

ちなみに、千葉真一はユマ・サーマンら女優陣の剣術指導もしています。

「キル・ビル」の見所は、歴史的考察よりも、日本刀を使っての荒唐無稽なアクションにあると言えるでしょう。

日本刀の使い手同士が激突

G.I.ジョー

2009年(平成21年)のアメリカ映画。「スティーヴン・ソマーズ」監督。

金属物質を破壊する究極の兵器を手に入れた国際的な闇の組織「コブラ」に、地上最強のエキスパートチーム「G.I.ジョー」が挑むアクション。

このG.I.ジョーチームメンバーのひとり、「レイ・パーク」演じるスネークアイズが日本刀の使い手です。コブラメンバーの強敵ストームシャドーは、かつてスネークアイズと共に日本で修行した兄弟弟子でした。

スネークアイズ役のレイ・パークは、「スター・ウォーズ/ファントム・メナス」ではダース・モールを演じ、日本刀ではありませんが、両刃のライトセーバーで見事な剣戟を見せてくれます。一方、「イ・ビョンホン」演じるストームシャドーは、大小2本の日本刀を使いこなす2刀流であり、2人の戦いは迫力満点です。

手裏剣まで飛び出す彼らのスタイルはまさに現代の忍者。とりわけスネークアイズは全身黒ずくめで、顔まで隠しているのですから、忍びの者のイメージそのものでした。

では歴史上の、現実の忍者も日本刀を抜いて戦うことがあったのでしょうか。

結論から言うと、忍者は戦わないのが基本でした。

忍者の最大の任務は情報収集です。敵に関する情報を集めて、主君に報告しなければなりません。そのためには、できる限り戦いを避け、生き延びて戻らなければならなかったのです。

戦わないとはいえ、もちろん忍者も日本刀を携えていました。江戸時代以降は、武士階級以外の日本刀の大小帯刀は禁止。ただ、届け出さえすれば、旅行者の「道中差し」や、夜間外出時の護身用として脇指の携行は認められました。これは忍者にとってはたいへん好都合。目立たないよう一般庶民にまぎれて行動することができたからです。

また、伊賀流や甲賀流など一部の忍術流派では、「忍刀」(しのびがたな)、または「忍者刀」(にんじゃとう)と呼ばれる日本刀が用いられたとも伝えられています。

忍者刀

忍者刀

忍刀の長さは打刀と脇指の中間ほど。刀身の反りは少なく、直刀に分類される形状でした。鐔(つば)はやや大きく角張っていて、塀などを越えるとき、日本刀を立ててここに足を掛け、踏み台としても使えました。鞘(さや)に付けている下緒(さげお)は通常よりも長い物が使用されていましたので、踏み台にしたあと引っ張り上げて回収することができたのです。

さらに、黒塗りの鞘は光を反射しないよう艶消しに。鞘の先端部分の鐺(こじり)は金属製で鋭く、地面に突き立てたり、武器としても使えたりするように仕上げられていました。

このように様々な工夫がなされた忍刀ですが、現存している実物の多くは実戦用ではなく、敵に対する団結のシンボルだったという説や、観光施設の展示用として明治時代よりのちに作られた物だという説もあり、その存在は今も謎に包まれています

日本刀の与える影響は大作にも

「G.I.ジョー」の項目でも少し触れましたが、大人気シリーズの「スター・ウォーズ」に武士道の精神が息づいているのは有名な話です。

「ジョージ・ルーカス」監督は「黒澤明」監督を尊敬しており、「七人の侍」や「隠し砦の三悪人」といった黒澤作品の影響を受けていると、ルーカス監督本人が何度もインタビューで答えています。

七人の侍

七人の侍

ジェダイの騎士が操るライトセーバーでの戦いは、まさしく日本刀での一騎打ち。ジェダイの騎士の精神も武士道に通じるものがあります。

またダースベイダーのデザインは、日本の戦国時代の鎧兜をベースにしているとのこと。ルーカス監督は、黒澤作品の重鎮である「三船敏郎」にダースベイダー役をオファーしたそうです。惜しくもこれは実現しませんでしたが。

他にも、武士道の精神と日本刀に影響を受けたと思われる洋画作品はたくさんあります。日本刀の魅力は、もはや世界の共通認識なのですね。