日本刀と東京スカイツリーの意外な関係!?

2012年(平成24年)2月29日に竣工した「東京スカイツリー」(以下、スカイツリーと言います)は、高さ634mの「世界一高い自立式電波塔」です(2018年[平成30年]現在)。最新の建築技術の粋を集めて建築されたスカイツリーと、日本の伝統工芸の代表的な存在である刀剣・日本刀には、意外な共通点がありました。今回は、刀剣・日本刀を中心とした伝統文化とスカイツリーの間にある意外な関係性に迫ります。

まずは、スカイツリーについて簡単に

「スカイツリー」は、東京都墨田区にある電波塔に観光・商業施設やオフィスビルが併設されている施設で、竣工は2012年(平成24年)2月29日。支柱などの支えがない自立している電波塔としては、世界一の高さ(634m)を誇っています(2018年[平成30年現在])。

高さと共に目を引くのがその細長い姿。従来の鉄塔に比べて一際「スマートなシルエット」が特徴的です。

スカイツリーが建設されることになったのは、都心部分に200m級の高層建築物が密集したことによって、その狭間にある建物などに電波が届きにくくなってしまうことが懸念されたこと。

加えて、携帯機端末向けの放送受信環境の快適化に向けて、従来の「東京タワー」(高さ333m)に代わる電波塔の必要性が認識されていたという事情がありました。

そのため、相当程度の高さ(600m級)を有する「新タワー」が求められたのです

詳しくは後述しますが、スカイツリーは刀剣・日本刀の特徴である「反り」(そり)と寺院建築の柱などに取り入れられている「起り」(むくり)を取り入れたシルエットによって、日本古来の美意識を表現。

こうした伝統的なデザインと、最新の技術が融合した新しい東京のランドマークであると言えます。

傾きを演出している!?デザイン

「スカイツリーは傾いているのではないか?」などと言うことを言われることがあります。確かに、見る場所によっては、スカイツリーが傾いているように見えることも…。

もしかして建築していくうちに傾いてしまった欠陥建築?地盤沈下が発生してしまったの?

否。そんなことはありません。この傾きは、あくまでも目の錯覚による物です。

この問題を読み解くヒントは、日本の伝統的なデザインに隠されていました。それが反りと起り。

反りとは、直線に対して凹むようにして緩やかにカーブを描いている状態で、その代表的な例が刀剣・日本刀にみる湾曲です。

他方、起りとは、直線に対して凸型に膨らむようにして緩やかにカーブを描いている形状にあること。代表的な例としては、寺院などの建築物の柱が挙げられます。

反り・起り

反り・起り

刀剣・日本刀における反りは、「焼き入れ」という制作過程において、原材料となる鋼の収縮速度の違いから生じる物。反りがあることで、切断が容易になると共に、刀剣・日本刀が有する独特な凛々しさ、姿の美しさを引出しているのです。

他方、起りは、どっしりとして安定感のあるイメージ。スカイツリーは、反りと起りのラインを活かしたデザインの建造物であるため、稜線(りょうせん:面と面の境界線)の一方が反りのラインで、他方が起りのラインである場合には、左右非対称で建造物が傾いているように見えることがあるのです。

スカイツリーにみる、反りと起り

それでは、スカイツリーにおいては具体的に、どのような形で反りと起りが用いられているのでしょうか。

その前提として、確認しておきたいのは、スカイツリーの足元が1辺約68mの正三角形であること。この正三角形の3つの頂点から上に向けて伸びるラインは、反りのシルエットを描いています。

他方、正三角形の辺の中間点から上に伸びているラインは起りのシルエットです。それ以外は面を描く直線的なシルエットのライン。

これらの組み合わせによって、スカイツリーの輪郭が形成されています。反りと起りの鉄柱が組み合わさることで、足元の正三角形が、なだらかに円形へと変化していくのです。

スカイツリーを地面と水平に輪切りにした場合の「断面」は、上に伸びていくにしたがって、正三角形から徐々に円に近づいていき、地上約300mの地点で完全な円になり、さらに上へと伸びていきます。裏を返せば、足元から地上約300m地点まではどこを輪切りにしても、同じ形状であることはないということ。

そして、円形になった部分にあるのが(第1)展望台です。展望台において、360度の視界を確保するためには死角のない円である必要があったことで、このような形状変化の工夫がなされたと言えます。

鉄柱の形状と断面図

鉄柱の形状と断面図

「スカイツリーの本来の役割」は、電波塔として地上デジタル放送の電波を送信すること。そのためには、どの方向に対しても「正面」を向いた状態になる円であることが好ましかったのです。

さらに、600m級の超高層建築物であるスカイツリーは、常に強風との戦いを余儀なくされる宿命にあります。そのため、全方位からの(風の)力に対して偏ることなく対応できることが必要でした。それを実現するために、理想的な形状が円形だったと言えるのです。

鉄塔などの高層建築物を建築する場合、一般的に建築物の高さに比例して足元には広い土地が必要になります。なぜならば、建築物の幅とその高さの比率を示す「アスペクト比」(塔状比)が高くなることは、足元が狭い状態で建築物の背が高いことを意味しており、それだけ風や地震の影響を受けての横揺れによる倒壊の危険が増大するからです。スカイツリーに当てはめた場合のアスペクト比は1:9.3になります(幅約68m:高さ634m)。

ちなみに、先代に当たる東京タワーのアスペクト比は1:3.5(幅約95メートル:高さ333m)。一見、不安定であるようにも思える細長いシルエットにもかかわらず、竣工前の2011年(平成23年)3月11日に発生した「東日本大震災」の際にも倒壊に直結するような大きな損壊等はなかったと言われています。スカイツリーは、計算し尽くされた精密な建築物なのです。

「折れず、曲がらず、よく切れる」

刀剣・日本刀の特長としてよく用いられる言葉です。切れ味を生み出す硬さを保持しながら、脆くはなく粘り強い。並立することが難しいとされるこれらの要素を並立せしめていることこそが、刀剣・日本刀の真髄でもあるのです。

このことはスカイツリーにも当てはまります。前述のように、高さ634mのスカイツリーがアスペクト比の高い形状であるにもかかわらず、震度5強の激しい揺れや、台風などの強風にさらされても倒壊しなかったことは、「巨大であるが精密である」という並立することが難しいと言える2つの要素が並立していることの証(あかし)。この点においても、スカイツリーには刀剣・日本刀に通じる物があると言えます。

おまけ:スカイツリーにまつわる「都市伝説」

最後に、スカイツリーにまつわる都市伝説を。

江戸時代末期に活動していた浮世絵師「歌川国芳」(うたがわくによし)が「隅田川」(すみだがわ)周辺の様子を描いた作品「東都三ツ股の図」(とうとみつまたのず)には、スカイツリーによく似た形状の細長い建造物が描き込まれているのを見ることができます。

ただし、この建造物の「正体」については、井戸を掘るための櫓であるという説が有力です。

東都三ツ股の図

東都三ツ股の図

この作品は1831年(天保2年)頃に制作されたと言われていますが、もし、描き込まれている建造物の正体が不明であるとすれば、国芳は約180年後の様子を「予見」していたことになります。にわかには信じ難い話ですが、国芳は自分の死期を作品の中で「予言」していたのではないかとも言われている人物。もしかしたら、もしかするかもしれません。

ちなみに、スカイツリーが建設されているのも隅田川周辺。国芳の「目に見えていた」のは井戸を掘るための櫓か、未来の電波塔か、それとも…?

浮世絵の中に描き込まれたスカイツリーの存在。信じるか信じないかは、あなた次第です。