平成の名刀・名工展

刀剣・日本刀は、日本のみならず世界中から人気を集め、性別や年齢、国境を越えて様々な形で現代でも愛されています。廃刀令、そして第二次世界大戦敗戦といった二度にも亘る歴史的な危機を乗り越えてきた「たたら製鉄」から作り出される「和鉄」(わてつ)を用いて、今なお作刀(さくとう)を続ける現代刀の刀匠達。数少ない彼ら刀匠が作り出した渾身の1振を間近で拝見することができるイベントが始まります。

平成年間に作刀された「美術品」としての日本刀32振が一堂に会する一大イベント

現在も刀剣・日本刀は各地域で作刀されており、作り手である刀工の人数は全国でおよそ300人。ひとりあたり年間20振余りの刀剣・日本刀を作刀しています。

日本の各地に各刀工が鍛刀場を構え、「日刀保たたら」から配給される「和鋼」(わこう:砂鉄を原材料として産出される鋼)を使って作刀し、日本だけではなく海外の愛好家などのもとへも渡る現代刀

一方で、切れ味などを追求して和鋼を用いずに作られたステンレス刀や模造刀なども多く存在しますが、迫力や見応えなどは本物の刀剣・日本刀には到底及びません。

普段はなかなかお目見えする機会がない、現代に生きる刀匠達が作り出した名刀の数々が、新元号に変わる記念すべき年に一挙大公開されます。

大賞選出の基準とは

「平成の名刀・名工展」へ応募された41名のうち、32名の刀匠が「名工選」に選出され、その中から「名工大賞」、「名工準大賞」、「特別奨励賞」、「奨励賞」の受賞者が決定されました。

大賞選出の基準としては、その刀剣・日本刀のでき栄えだけではなく、刀匠自身の制作活動や受賞歴刀剣・日本刀界への貢献度(継承者の育成、普及教育等)が挙げられ、ただ単純に作刀の技術が優れていれば受賞されるものではありません。

刀剣・日本刀を多くの人へ伝えていくための活動や、弟子の育成、伝統を守りつつ新しい試みを取り入れるべく研鑽を積み、刀剣・日本刀と真摯に向き合って生涯を捧げている刀匠を選出し、その意志を後世へ伝えていくことが目的なのです。

大賞にノミネートされた4名の名刀匠

今回、大賞にノミネートされた刀匠は4名。いずれも大賞の評価基準を満たし、刀剣・日本刀界で名を馳せる名刀匠です。

刀剣・日本刀愛好家の方はご存知のことと思いますが、最近刀剣・日本刀に興味が出てきたばかりで詳しく知らないという愛好家ルーキーの方のために、大賞にノミネートされている4名の刀匠を簡単にご紹介します。

生涯「鍛冶屋」を誓った名刀匠「河内國平」

河内 國平(かわち くにひら)/ 奈良県相州伝大和伝

第14代刀匠「河内守國助」の次男。本名「河内道雄」。1966年(昭和41年)、関西大学法学部を卒業後に人間国宝「宮入昭平」(行平)に入門。第61回・第62回「神宮式年遷宮」の太刀を制作。

現在の玉鋼では、再現不可能と言われていた古刀の特徴である地紋「乱映り」を完全再現した「國平河内守國助」(くにひらかわちのかみくにすけ)を作刀し、刀剣界の最高賞と名高い「正宗賞」(太刀・刀の部門)を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。

石上神宮七支刀

石上神宮七支刀

「石上神宮七支刀」(いそのかみじんぐうしちしとう)を始め複数の古代刀の復元を積極的に行ない、また近年などは國平氏の人柄にも注目が集まって、写真集や小説、漫画などの形でその認知度が拡大。これまでに育て上げた弟子も独立して自身の鍛刀場を持ち、いずれも斯界で活躍している。

本展覧会への出展作品:太刀/銘 河内守國助國平(刻印・無界)春暁平成二十六甲午年吉日製作之

800年の伝統を継承し続ける名刀匠「月山貞利」

月山 貞利(がっさん さだとし)/奈良県/月山一派

人間国宝・刀匠「月山貞一」の三男。本名「月山清」。

日本のみならず海外でも展覧会を開き、第65代横綱貴乃花、第66代横綱若乃花、第69代横綱白鵬の土俵入り太刀の作刀も行なった。

小竜景光

小竜景光

写しの制作にも精力的であり、水戸徳川家伝来「手掻包永」(てがいかねなが:鎌倉時代の刀工)の名物「児手柏」(このてがしわ)や、「備前長船景光」(びぜんおさふねかげみつ:鎌倉時代の刀工)の名物「小竜景光」(こりゅうかげみつ)などの写しを制作。弟子の育成にも熱心で、自身の長男「貞伸」もまた刀匠としての血を継ぎ、若くして数々の受賞歴を持ち、刀剣・日本刀界の未来を見据え啓蒙活動に尽力

本展覧会への出展作品:大身槍/銘 大和美和山狭井河之上 月山貞利謹切物同作(花押) 平成五葵酉歳二月吉祥日

刀剣界の革命児!新時代の名刀匠「宮入法廣」

宮入 法廣(みやいり のりひろ)/ 長野県/相州伝、 備前伝

人間国宝・刀匠「宮入行平」を叔父に持つ。刀匠として至上最年少(39歳)で最高位の無鑑査刀匠に認定。皇室高円宮家女王の御護短刀や、第68代横綱朝青龍の土俵入り太刀を作刀。刀剣界最高峰の「正宗賞」受賞

燭台切光忠

燭台切光忠

近年は「正倉院」の宝物「刀子」(とうす:装飾が施された小型のナイフ)の復元の他、徳川家伝来の宝刀「燭台切光忠」を復元。またSNSを通じて自身の活動を広く発信しており、相州伝の宮入一門とは異なる流派の「隅谷正峯」(すみたにまさみね:備前伝、人間国宝に認定されている刀匠のひとり)へ弟子入りをするなど、流派の枠を越えて独自の作柄を創り出す唯一無二のアーティスト。型破りなその経歴も併せて「刀剣界の革命児」とも言われ、刀剣・日本刀界の可能性の幅を広げている。

本展覧会への出展作品:太刀/銘 法廣 平成己丑年弥生

当代随一の実力派!天才と名高い名刀匠「吉原義人」

吉原 義人(よしはら よしんど)/ 東京都/吉原一門

(備前伝)陸軍受命刀匠師範「吉原國家」の門人。当代随一の知名度と実力を誇る伊勢神宮の御神刀を5振作刀、新作名刀展「高松宮賞」などの上位特賞を複数受賞。

備前伝では難しいとされる「鮮やかな映り」を再現し、刀剣・日本刀界備前伝ブームの先駆者となる。これまでに500振を超える刀剣・日本刀を制作。世界各国の美術館で作刀などの実演を行なうなど、非常に活動的な刀匠。

童子切安綱

童子切安綱

近年は、天下五剣のひとつ「童子切安綱」(どうじぎりやすつな)を復元。技術伝承にも尽力し、弟子達も多く活躍している。

本展覧会への出展作品:脇差/銘 立浪日郎六十八才記念 義人彫同作 平成十一年十月一日

以上4名の名刀匠は、いずれも刀剣・日本刀界における重鎮とも呼ぶべき方達です。本展覧会で大賞にノミネートされている4名の刀匠達の中から、将来人間国宝に認定される人物が現れるかもしれない、という噂もあります。

現在、刀匠として人間国宝に認定されている人数は6名。1997年(平成9年)に「大隅俊平」(おおすみとしひら)氏が、刀匠として6人目の人間国宝に認定されて以来、現在に至るまで20年以上、人間国宝に認定された刀匠はいません。

次の人間国宝に選ばれる可能性を秘めた刀匠達の美術品としての刀剣・日本刀と、お城や博物館の展示品として見かける昔の刀剣・日本刀との違いは、実際に観ることでしか体感できないものです。

開催会場・時期は全国で3ヵ所

平成の名刀・名工展の会場は3ヵ所。開催期間もそれぞれ異なっています。

いにしえの伝統を守り受け継ぎ、そして独自の技を磨いてきた刀匠達。日本に今なお現存する、奇跡の集大成とも言える刀剣・日本刀。

人々を魅了してやまない、日本が世界に誇る美術品としての刀剣・日本刀を、この機会にぜひご覧下さい。

林原美術館(岡山県)

  • 会期:2019年(令和元年)5月18日(土)~7月7日(日)
  • 所在地:岡山県岡山市北区丸の内2-7-15
  • 開館時間:10~17時(最終入館 16時30分)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
  • 電話番号:086-223-1733
  • 特設サイト:林原美術館
林原美術館

林原美術館

刀剣博物館(東京都)

  • 会期:2019年(令和元年)8月24日(土)~10月6日(日)
  • 所在地:東京都墨田区横綱1-12-9
  • 開館時間:9時30分~17時(最終入館 16時30分)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
  • 電話番号:03-6284-1000
  • 公式ホームページ:刀剣博物館
刀剣博物館

刀剣博物館

鉄の展示館(長野県)

  • 会期:2019年(令和元年)11月9日(土)~2020年(令和2年)2月2日(日)
  • 所在地:長野県埴科郡坂城町(はにしなぐんさかきまち)坂城6313-2
  • 開館時間:9~17時(最終入館 16時30分)
  • 休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)
  • 電話番号:0268-82-1128
  • 公式ホームページ:鉄の展示館
平成の名刀・名工展
平成の名刀・名工展は、今後の刀剣界のさらなる発展に貢献する催しとして開催されます。