75_七五三と刀剣・日本刀

2019年(令和元年)の「七五三」(しちごさん)は、11月15日金曜日。華やかな着物や羽織・袴(はかま)で装った子ども達と神社へお参りするだけでなく、フォトスタジオで記念写真を撮るのも、もはや定番行事ですね。この七五三のとき、5歳の男の子が着る衣装に、「懐剣」(かいけん)と呼ばれる護身用の短剣が付いているのを知っていますか? また最近は、子どもの凛々しい武将姿を記念写真に収めるのも人気とのこと。撮影の際、手にするのは、おもちゃの刀剣・日本刀です。 今回は、子ども達をお祝いする七五三の起源について、さらに七五三と刀剣・日本刀、そして武将との関係に迫ってみました。

子どもが主役! 七五三の起源

七五三の起源は、室町時代にあります。当時は幼い子ども、特に赤ちゃんの生存率は高くありませんでした。そのため、「7歳までは神のうち」と言われ、まだ魂がこの世に定まっていないと考えられていたのです。そして7歳になると、ようやく魂が定まり、人の世の一員として認められます。

人々は、そうして子どもが無事に成長できたことへの感謝を捧げ、さらなる成長と幸せを神社で祈願するようになりました。これが七五三の由来です。

子どもの年齢3歳・5歳・7歳で行なうのはなぜ?

75_七五三

七五三

七五三の年齢には、それぞれ意味があります。 3歳で行なわれる儀式が「髪置の儀」(かみおきのぎ)です。江戸時代には3歳までは髪を剃り、赤ちゃんの期間が終わる3歳から髪を伸ばすという習わしがありました。こうすることで、健康な髪が生えると信じられていたからです。子どもが無事に育ったことをお祝いして、3歳で初めて髪が整えられました。

数え年で5歳になった男の子には、男性の衣服である袴を着けるという「袴着の儀」(はかまぎのぎ)が行なわれます。それまでは、男の子も女の子も一緒の「子ども」でしたが、5歳からは、男性として社会を支えるメンバーになるという意味がありました。

7歳に満たない幼い女の子の着物は、「付け紐」の付いた幼児用です。付け紐とは、簡単に着られるようにあらかじめ衣服に付けた紐のこと。これが数え年で7歳になると、初めて大人と同じ本仕立ての着物に、幅の広い帯を結ぶことになります。この儀式が「帯解の儀」(おびときのぎ)です。7歳のお祝いには、まだ定まっていなかった子どもの魂を、この世にしっかり結んで留めるという意味が込められています。

お祝いする子どもの年齢は、昔は数え年でしたが、今は満年齢で行なうのが主流。どちらでも大丈夫だとされています。

七五三が11月15日に決まった理由

徳川綱吉

徳川綱吉

11月15日は、江戸幕府の5代将軍「徳川綱吉」(とくがわつなよし)が、体の弱かった長男「徳川徳松」(とくがわとくまつ)の健康を祈願し、袴着の儀を行なった日です。その後、徳川徳松が元気に育ったことから、儀式の日取りが定着したと伝えられています。

また、旧暦の15日は「二十八宿」(にじゅうはっしゅく)の「鬼宿日」(きしゅくにち)にあたり、婚礼以外のすべての行事が大吉であるとされました。

二十八宿とは、天球の赤道付近にある28の星座のこと。それぞれの宿の西端に位置する星を基準として、かつて天文学や占星術に用いられました。鬼宿は、かに座θ星(シータせい)です。

明治時代以降、七五三は新暦の11月15日に行なわれるようになりましたが、必ず11月15日にお祝いしなければならないと決まっている訳ではありません。現代では、家族が集まりやすい週末や祝日に行なうことが多くなっています。神社やフォトスタジオの混雑を避けるために、早ければ9月に行なう場合もあるとのことです。

七五三と日本刀の関係

懐剣の意味は「自分の身は自分で守る!」

75_懐剣

懐剣

七五三で5歳の男の子が身に付ける衣装は、羽織に袴。この羽織と袴に合わせて、手には白い扇子を持ち、白い足袋(たび)に白い鼻緒の雪駄(せった)を履くのが基本です。

そして、懐剣を袴の前帯左側に挟んで身に付けます。懐剣とは、袋に入った小さな短刀のことで、もともとは武家の女性が護身用として携えていました。懐剣には、「いざとなったら自分の身は自分で守る」という決意が込められています。それくらい強くて、頼もしい男の子に育ってほしいという親心が表れているのですね。

さらに、懐剣にはお守りとしての意味もあります。古来より、刀剣・日本刀には魔除け・災厄除けの力が宿ると考えられ、節目ごとの儀式や行事に用いられてきました。子どもの成長をお祝いし、無病息災を願う七五三には欠かせない守り刀です。

現代では、袋に収められた懐剣は、もちろん本物ではありません。だいたい段ボール紙か木、または樹脂製の筒のような物が入っています。懐剣袋の多くは正絹(しょうけん:まじり物のない絹織物)で、房の付いた飾り紐付き。この紐は、菊の花を模した「菊結び」にします。菊結びは延命長寿の意味を持つ、おめでたい飾り結びです。

子ども武将爆誕! 日本刀を構えて決めポーズ!

羽織・袴を身にまとい、刀剣・日本刀を手にしての記念撮影も人気を博しています。今まさに、鞘から刀身を抜き放とうとしている瞬間や、刀剣・日本刀を正面で構えたポーズ、肩にかけたクールなポーズなど、子ども達の個性も様々。

撮影に使用する刀剣・日本刀はおもちゃですが、本物と見まがうばかりの凝った作りで、写真映えも抜群です。しかも、子どもが持ちやすいように、長さは実物よりも10cmほど短く、重さも軽量。剣先を丸くするなど、安全性に配慮された工夫も施されています。

刀剣・日本刀を持つだけでなく、戦国武将さながらに甲冑(鎧兜)を身に付けて撮影したり、甲冑(鎧兜)を背景として飾ったりしての撮影も好評とのことです。

武将のように勇ましくあれ

羽織のデザインに込められた願い

戦国武将や武士のように凛々しくあってほしいという願いは、羽織の図柄にも表現されています。特に子ども達とパパ・ママに人気の高い羽織の図柄と、その意味を見ていきましょう。

75_兜の変遷と特徴

戦のときに大切な頭を守る「兜」は、災いや邪気から身を守ってくれるという意味があります。

また、豪華な飾りのある兜は、身分の高い武将が身に付けていたことから、子どもが将来はリーダーとして大勢を引っ張っていくような、威厳を備えた人物になってほしいとの願いや、自分の選んだ道で大成するようにとの祈願が込められているのです。

武将

馬を駆る甲冑(鎧兜)姿の武将をあしらった羽織は、迫力も満点。兜と同様に、立身出世や大願成就の意味があり、男の子の健やかな成長を願っています。

武将の絵柄に、富士山や松など、縁起が良いとされる意匠を組み合わせた羽織も人気です。

その他

鋭い眼力で先を見通し、鋭利な爪で1度つかんだ幸運は離さないという「鷹」や、「昇龍」として出世や活躍を象徴する「龍」もポピュラーなモチーフです。デザインの格好良さから男の子に好まれています。

「打ち出の小槌」もメジャーな図柄。振れば願いが叶うというところから、金銭や、ほしい物が手に入るようにとの願いが込められ、また、「一寸法師」(いっすんぼうし)が大きくなるときに使われた昔話にちなんで、大きく育つようにと願う意味もあります。

子どもと一緒に、日本の伝統文化にふれる

羽織の図柄や小物にも深い意味が込められている七五三の衣装。子どもの健康と成長を願う親心が強く感じられるようです。

また、七五三は日本の伝統的な文化にふれる良い機会であるとも言えます。子ども達の七五三をお祝いしながら、戦国武将の活躍や、江戸時代の暮らしに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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