171_桑名市博物館で村正鑑賞

三重県桑名市にある「桑名市博物館」は、地域に根差した博物館です。毎月様々な展覧会を開催していますが、「妖刀」として知られる「村正」関連の特別展を開催するのは、今回が3度目。前回、前々回は博物館史上でも記録的な動員数を誇り、三重県桑名市が誇る名匠村正の作を一目観ようと、全国から刀剣ファンが訪れました。

そして、2020年(令和2年)、実質3度目となる村正の特別展「三重刀剣紀行‐甦る村正の煌めき‐」を開催!今年は「文化財保護法制定70年」にあたる年ということで、村正をはじめとした三重県にゆかりのある刀工の作が勢ぞろいします。開催場所である桑名市博物館の概要や本展覧会の見どころをたっぷりご紹介します!

桑名市博物館とは

171_桑名市博物館

桑名市博物館

桑名市博物館」は、三重県桑名市にある博物館です。1971年(昭和46年)に「桑名市立文化美術館」として開館し、その後1985年(昭和60年)に三重県初の市立博物館になりました。

地域密着型の博物館として、特別企画展の際は「三重県や桑名市にゆかりのある文化、芸術」をテーマに様々な美術品を展示。ご家族やお友達同士で、気軽に立ち寄れる観光スポットとなっています。

刀剣展示をしている博物館・美術館についてご紹介!

旅探では桑名市博物館をはじめ、日本全国の観光名所を検索できます!

パブリネットでは三重県をはじめ、日本全国の市役所や区役所等を検索できます!

パブリネットでは桑名市をはじめ、日本全国の市役所や区役所等を検索できます!

桑名市博物館の特徴

遊び心満載の紹介文・リード文

一般的な博物館などでは、展示品にどのような物品であるのかの説明文が添えてあり、説明文の情報量は施設によって様々。桑名市博物館では、来館した人達に親しみを持ってもらえるようにと、ある工夫がされています。

それは、紹介文やリード文(キャッチコピー)にユーモア溢れる一言を入れること。美術品や文化品の紹介などは、一般的には「まじめ」や「堅苦しい」などの印象を持たれることが多く、若い人達からはどうしても敬遠されがちです。

多くの人に、美術館や博物館は気軽に立ち寄れる施設であることを知ってほしい。そこで、桑名市博物館では展示品に沿える紹介文や説明文に、時事や流行の言葉になぞらえた一文を添えるようにしました。

この工夫は非常に効果的で、館内スタッフや企画担当者の人柄が文章を通して窺えることで「美術品は難しい物ではない」と思えるようになったり、展示品が記憶に残るようになったりするのです。

なお、2階に上がって廊下左手側にある「過去に開催された企画展のポスター展示」の紹介文にも、企画担当者のフィードバックが掲載されているため、訪れた際はぜひ観てみて下さい!

1枚の紙から作られる桑名の千羽鶴

171_桑名の千羽鶴

桑名の千羽鶴

桑名市博物館2階の展示室奥には、色とりどりの美しい千羽鶴が展示されています。

数羽の折り鶴が連なり、ひとつの芸術品となっていますが、この折り鶴はなんと1枚の紙から作られて連結しているのです。この折り鶴は「連鶴」(れんづる)と言い、桑名市の無形文化財の指定名称では「桑名の千羽鶴」と呼ばれ、桑名市は連鶴の発祥の地として知られています。

連鶴は、約200年前に桑名にある「長国寺」の住職が考案し、2羽から97羽までの連続した千羽鶴の制作方法を書物に遺しました。なお、その折り方は全部で49種あります。

桑名市博物館の村正展

2016年(平成28年)の村正展

171_村正 伊勢桑名の刀工

村正」は、伊勢国桑名(現在の三重県桑名市)で活躍した刀鍛冶です。もともとの生まれは美濃国(現在の岐阜県南部)で、のちに伊勢国へ移住し多くの刀剣を鍛えました。

桑名市博物館では、過去にも刀剣の特別展を開催していますが、村正に焦点をあてた展覧会は過去に2度行なわれています。

1度目は、2016年(平成28年)の9月から10月にかけて開催された特別企画展「村正‐伊勢桑名の刀工‐」。このとき、会期約1ヵ月という期間で約15,000人もの来館者が訪れました。

この数は、桑名市博物館史上でも最多。当時はまだ刀剣ブームが起きたばかりな上に、刀剣ブームの発端となったブラウザゲーム「刀剣乱舞」では村正が実装されていなかった時期でした。

それにもかかわらず、連日多くの刀剣ファンが桑名市博物館へ訪れ、会期終了後には「2回目の開催はまだ?」などの反響の声も聴かれたほどだったのです。

刀工「村正」の情報と、制作した刀剣をご紹介します。

2018年(平成30年)の村正展

171_村正 村正と五箇伝

2018年(平成30年)の10月から11月にかけて開催されたのが、特別企画展「村正Ⅱ‐村正と五箇伝‐」です。

刀剣乱舞で「刀剣男士」(刀剣男士はニトロプラスの商標)として村正が実装したあとに開催されたことに加え、桑名市博物館の入り口に刀剣男士の村正パネルが設置された他、「刀剣ワールド財団」が所有する3振の村正を含め、17振の名刀が集結。

会期中に訪れた来館者数は約8,000人。SNS上では「行ってきました報告」や「この村正が良かった!」、「リード文が面白かった」などの感想が多く寄せられました。

三重刀剣紀行‐甦る村正の煌めき‐

実質3度目の村正展

そして、2020年(令和2年)。桑名市博物館では、新型コロナウイルスの影響で「刀剣幻想曲」が中止となりましたが、10月17日(土曜日)から11月29日(日曜日)まで「三重刀剣紀行‐甦る村正の煌めき‐」を開催することとなりました。

文化財保護法と刀剣

今年は「文化財保護法制定70年」にあたる年です。

「文化財保護法」とは、1950年(昭和25年)に制定された、国宝重要文化財、特別天然記念物などに指定された文化財の指定や管理、保護を行なう日本の法律のことで、経費の一部を公費で負担することができるなどの特徴があります。

現在、博物館や美術館、また個人が所有する日本刀の中にも、国宝や重要文化財に指定される刀剣が多く存在し、展覧会などでその優美な姿を観ることが可能です。

刀剣の場合、「適切な管理、保存」というのは「適切な場所で保管し、なおかつ定期的に手入れすること」を意味します。

刀身は、鉄や鋼などの金属で作られているため、手入れを怠ると錆びる恐れがあるのです。展覧会や施設などで展示されている刀剣が美しい姿で保たれているのは、刀剣を適切に管理(手入れ)している人がいるため。

桑名市博物館では、「文化財保護法の意味」をより多くの人に伝えるために、今回「実質3度目」となる村正展を開催しました。

最大の見どころは漆を研いで姿を現した刀身

171_展覧会の様子

展覧会の様子

本展覧会の一番の見どころは、村正と、村正の弟子である「正重」の刀剣です。

三重県桑名市にある「春日神社(桑名宗社)」(かすがじんじゃ/くわなそうしゃ:桑名神社と中臣神社)が所蔵する村正及び正重は、約75年前に空襲から刀剣を守り、また戦後も適切な管理ができなくなることを見越して、当時の宮司が苦渋の決断の末に漆を施しました。

刀剣はその性質上、表面に漆が塗られると相当な腕前を持つ研師でなければ、もとの状態へ戻すことはできません。

では、なぜ約75年の時を経て村正と正重を再びもとの姿へ戻すことになったのか。それは、以前桑名市博物館で開催された村正展へ訪れた方から寄せられた、1通のメールがきっかけでした。

「刀を守るために漆を塗ったのは、とても良い判断だったと思います。しかし、戦後これだけ時が経っているのですから、本来の姿に復元されるべきではないでしょうか。刀は、きちんと磨いて手入れを行なってこそ、価値があると思います」

この言葉を受けた宮司は、村正と正重を本来の姿へ戻す決意をします。村正と正重の修繕プロジェクトの様子はテレビでも取り上げられ、修繕を終えて美しい姿となった名刀を一目観ようと、全国各地から大勢の人が訪れました。

本展覧会で展示されているのは、このときに修繕された村正と正重です。桑名宗社が所蔵する村正と正重は各2振ずつあり、修繕プロジェクトではそれぞれ1振だけがもとの姿に戻りました。

本展覧会では、それぞれが「漆を研いでもとの状態となった刀剣」「漆が塗られた状態の刀剣」の2振が横並びで展示してあるため、訪れた際はぜひ見比べてみて下さい!

旅探では春日神社(桑名宗社)をはじめ、日本全国の観光名所を検索できます!

伊勢国桑名の名工達

三重県を中心に活動した刀工は、村正だけではありません。村正は、優れた作を鍛えただけではなく、後継者の育成にも尽力したことで知られています。

村正に師事し、作風に影響を受けた刀工一派のことを「千子派」
(せんごは/せんじは)と呼び、千子派には正重や「藤正」などの名工が存在します。

また、伊勢国で作刀した刀工や、千子派と交流を行なった刀工も多く、陸奥国白河(現在の 福島県白河市)出身の「宗次」、三重県安濃郡雲林院村を本拠とした「雲林院政盛」(うじいまさもり)、本国である越後国片貝(現在の新潟県小千谷市片貝町)の他、武蔵国(現在の東京都埼玉県神奈川県北東部)や伊勢国山田(現在の三重県伊勢市)に住した「天龍子橘久一」(てんりゅうしひさかず)、幕末時代に活躍した桑名の刀工「三品広房」(みしなひろふさ)などが挙げられます。

桑名鍔

「桑名鍔」とは、桑名で制作された(鐔とも)の一種のこと。

刀剣は、刀身そのものだけではなく、鍔や(さや)、(つか)などの各部位に至るまで、すべてを含めて美術品です。そのため、(こしらえ)に使用される鍔や縁頭(ふちがしら:柄の両端に付ける保護具)は、単体であっても美術工芸品と見なされるほどの意匠が凝らされています。

刀剣は、制作された地域によって長さや反り、重量、幅など、様々な違いが生じるのが特徴です。そして、その刀身にあった拵を用意することで、刀剣が持つ性能を最大限発揮することができます。

鍔もまた、その要素のひとつ。厚みや形状、重量などは国ごとで異なっており、桑名鍔は実戦向きに制作されました。シンプルな見た目で厚みや重さがあるため、一目観るだけでも実戦に使用されていたことが伺えます。

本展覧会では、桑名の鍔工である「信時」の作が6作展示されているため、刀剣に装着した際はどのような姿になるのか想像しながら観覧するのがおすすめです。

亀山鍔

三重県には、桑名鍔の他にもうひとつ「亀山鍔」という種類の鍔が存在します。

亀山鍔とは、三重県中北部にある亀山市付近で制作された鍔のこと。桑名鍔と亀山鍔は、同じ三重県内で制作されていますが、亀山鍔は桑名鍔よりも装飾性が高く、表面には色や絵柄が施されているのが特徴です。

表面の文様部分は彫りくぼめてあり、そこに「砂張」(さはり)と呼ばれる金属(または合金)を流し込む「流し込み象嵌」の技法で制作されました。 

本展覧会ではこの他にも、桑名藩松平家のお抱え工「樫野直信」(かしのなおのぶ)、三重県津市で活躍した名工「工藤延寿」(くどうえんじゅ)や亀山鍔の第一人者と言われる「国友貞栄」(くにともじょうえい)の作の他、桑名の名産品である「はまぐり」が大きく描かれた「間」(はざま)銘の作などが展示されています。

江戸時代の代表的な100藩を治世などのエピソードをまじえて解説します。

ファン必携!解説文付きの公式図録

桑名市博物館では、三重刀剣紀行‐甦る村正の煌めき‐の公式図録を1部1,000円で販売しています。

本図録には、本展覧会で展示されている作の鮮明な写真や情報をはじめ、伊勢国で活躍した刀工達の概要などが記載されているため、村正をはじめとした伊勢国の刀工をより深く知りたい刀剣ファンはぜひ手にいれておきたい1冊です!

171_公式図録

三重刀剣紀行‐甦る村正の煌めき‐公式図録

妖刀ではなく名刀としての村正

徳川将軍家から忌避された名刀

村正は、「徳川将軍家に災いをもたらした」という逸話や伝説が多く残されています。

映画や漫画などでも「妖刀村正」として登場する他、実際に徳川家の家臣や諸藩の大名は、徳川家へ配慮して村正の刀剣を破棄したり、銘をわざと削ったりしました。

しかし、一方でこのような見解もあります。村正は、妖刀と呼ばれる以前から切れ味と美しさに優れた名刀として多くの武士から求められており、特に徳川家に縁が深い三河国(現在の愛知県中東部)の「三河武士」は、村正を愛用していたと言います。そのため、徳川家にまつわる不幸のなかで、村正の名が出るのは当然とも言えるのです。

日本各地から、作刀地である桑名へ戻ってきた名刀としての村正を観る機会は多くありません。本展覧会へ訪れた際は、刀剣に込められた想いや背景を、ぜひ感じてみて下さい!

徳川家の来歴をはじめ、ゆかりの武具などをご紹介します。
【関連サイト】
村正 村正Ⅱ‐村正と五箇伝‐ 桑名市博物館 春日神社(桑名宗社)
刀剣展示 博物館の日本刀
全国にある主な博物館・美術館を一覧でご覧頂けます。
旅探 博物館・美術館
日本全国の博物館・美術館を検索できます。
旅探「全国の神社・寺・教会」
旅探で日本全国の神社・寺・教会を簡単検索!