127_甲冑の鑑賞方法と国宝の甲冑

「甲冑」と聞くと、武将が身に着けた防具で、現代ではあまり馴染みがない飾り物という印象があります。鑑賞する際も、どこをどう観れば良いかよく分からないため、とっつきにくいのが最大の欠点。そもそも甲冑とは何なのか。「甲冑のことは詳しく知らない」という方へ向けて、甲冑の基礎知識や国宝に指定されている甲冑をご紹介します!

日本の甲冑の特徴

「甲冑」とは、胴体を守るための「鎧」(よろい:甲とも書く)と、頭部を保護するための「兜」(かぶと:冑とも書く)から成る防具のこと。日本だけではなく、世界中のあらゆる地域で開発されました。

日本の甲冑は、胴体や頭部、肩、首元、腕、腰回り、足部など、装備の各部位が独立しているため、体を動かす際に支障が出ないのが最大の利点です。

また、日本で発達した甲冑は、権威の象徴と見なされていたことから装飾性が高く、美術品としての価値も非常に高いのが特徴のひとつ。そのため、現代でも国内外の愛好家から高い人気を集めています。

甲冑の各部位の名称

127_甲冑の部位名称

甲冑の各部位の名称

甲冑の各部位には、それぞれ固有の名称が付けられており、役割も様々です。ここでは、主な部位名称と役割をご紹介します。

面具

「面具」(めんぐ)とは、顔面を覆う防具のことです。

主に「半首」(はんぶり/はっぷり)、「半頬」(はんぼお)、「総面」(そうめん)、「目の下頬」(めのしたぼお)の4種に分類され、半首以外の3種を「面頬」(めんぽお)と呼びます。

半首

半首とは、額と頬を保護する面具のこと。平安時代中期から鎌倉時代まで流行しました。

面具の中では最も古くから使用されており、身分が低い兵が主に着用していたと言います。

半頬

半頬とは、頬から顎の部分を保護する面具のことで、南北朝時代に流行しました。

燕が飛んでいるように見える「燕頬」(つばくろぼお)や猿の顔に似た「猿頬」(さるぼお)、江戸時代後期の肥後国(現在の熊本県熊本藩主「細川重賢」(ほそかわしげたか)が考案し、九州地方で流行した「越中頬」(えっちゅうぼお)など、様々な種類があります。

目の下頬

目の下頬とは、目の下から顎を保護する面具で、室町時代末期から流行しました。

当世具足」(とうせいぐそく:戦国時代に使用された甲冑)が主流になった頃に登場し、半頬より広い範囲を保護できます。

表面に皺(しわ)が刻まれた「烈勢頬」(れっせいぼお)や頬骨がやや出っ張ったような「隆武頬」(りゅうぶぼお)、天狗のような長い鼻が付いた「天狗頬」(てんぐぼお)など、その見た目は様々です。

総面

総面とは、顔全体を覆う面具のこと。目の下頬が流行した室町時代末期頃に一部地域で用いられたと言われています。

総面は、一見すると防御性が高いため、実戦向きの面具にも見えますが、実は視界が遮られてしまうという欠点がありました。そのため、全国的に流行することはなかったと言います。

籠手

籠手」(こて)とは、上腕から手の甲までを保護する防具のこと。古墳時代から使用されていた防具で、室町時代に様々な形状の籠手が考案されました。

当世具足においては、主に「篠」(しの:縦長の鉄板)が仕込まれた「篠籠手」(しのごて)、座盤(ざばん:二の腕などを保護するために家地[いえじ:下地の布]に縫い付けてある鉄板)が付いた「筒籠手」(つつごて)、座盤の形状が瓢箪(ひょうたん)のようになっている「瓢籠手」(ふくべごて)の3種に分けられます。

臑当

臑当」(すねあて)とは、膝から踝(くるぶし)を保護する防具のこと。

古墳時代から使用されており、当時は2枚の臑当で足を包む「筒臑当」(つつすねあて)が主流でした。

南北朝時代になると、膝頭を守る部位「立挙」(たてあげ)が付けられるようになり、室町時代には、ふくらはぎを保護する「膕金」(よぼろがね)が考案されました。

」(そで)とは、肩から上腕部を保護する防具のこと。古墳時代に使用された「肩甲」(かたよろい)が起源と言われています。

素材や形状は様々ありますが、鉄や革製の「小札」(こざね)と呼ばれる小さな板を重ねて作られるのが一般的です。

」とは、腹部、胸、背中などを守る防具のこと。

欧州の甲冑を模して、前後1枚の鉄板で造られた「南蛮胴」の他、小札や伊予札(いよざね:伊予国[現在の愛媛県]の職人が考案した小札)を使用した装飾性の高い胴など、様々な胴が考案されました。

佩楯

佩楯」(はいだて)とは、太ももを守る防具のこと。古墳時代から使われていたと言われており、当世具足を着用する際は必ず用いられました。

素材に伊予札を使用した「伊予佩楯」や、伊予札より大きな札を素材にした「板佩楯」(いたはいだて)など、素材によってその名称は様々。

なお、佩楯はほとんどの具足の必須品でしたが、主君から足軽へ貸し出される「御貸具足」(おかしぐそく)には使用されなかったと言います。

兜とは、頭部や首元を守る防具のこと。そして、兜と言えば「前立」(まえだて)です。前立とは、兜の額部分に付けられる装飾のこと。前立に様々な意匠を凝らすことで、自分の存在を主張したり験を担いだりしました。

例えば「直江兼続」(なおえかねつぐ)は、「愛」の字型の前立を使用していたことで知られています。

また「伊達政宗」の三日月型の前立は、伊達政宗を表すシンボルマークとして有名。月を模した前立は伊達政宗以外の武将も用いていましたが、その理由は験を担ぐためです。

「不死」や「再生」を象徴する月「月輪」と、「生命」を象徴する太陽「日輪」は武士の間で人気が高く、前立だけではなく軍扇(ぐんせん:戦場で使用された扇子)に入れられた他、家紋としても使用されました。

直江兼続のエピソードをはじめ、それに関係する人物や戦い(合戦)をご紹介します。

伊達政宗のエピソードをはじめ、それに関係する人物や戦い(合戦)をご紹介します。

直江兼続のエピソードや、関連のある刀剣・日本刀をご紹介します。

伊達政宗のエピソードや、関連のある刀剣・日本刀をご紹介します。

今日から使える!甲冑の豆知識

甲冑の腰掛 鎧櫃

127_甲冑の豆知識

鎧櫃

「鎧櫃」(よろいびつ)とは、甲冑を収納する箱のこと。甲冑を保管する際に用いられる箱ですが、博物館などで展示される際は甲冑を置く台として使用されています。

鎧櫃の表面には家紋が入れられることが多いため、甲冑や鎧櫃に描かれている家紋から所有者を推測することが可能です。

甲冑撮影のコツ

甲冑を撮影するとき、押さえておきたいポイントがあります。それは、真正面からではなく、斜め前から撮影すること。

斜め前から撮影すると、奥行きが出て「映える」他、撮影者の姿がガラスケースに反射しないという利点もあるのです。

忍者の鎧

127_鎖帷子

鎖帷子

忍者と言えば、忍び装束を身に着けただけの身軽な姿を想像しますが、戦闘が予想される場合は忍び装束の中に「鎖帷子」(くさりかたびら)と呼ばれる防具を身に着けていました。

鎖帷子とは、甲冑の下に着用することで関節部の防御力を上げる補助防具のひとつ。諜報活動が主な仕事である忍者にとって、甲冑などの重量がある防具を使用することは難しかったため、身を守る手段として薄手の鎖帷子を着用していました。

なお、鎖帷子は大規模な合戦が行なわれなくなった江戸時代において、甲冑の代わりに武士の間で重宝された防具でもあります。幕末時代に活躍した「新選組」は、市中取り締まりを行なう際、隊服の下に鎖帷子を身に着けていたことで有名です。

国宝に指定されている甲冑

歴史的資料、また美術品としての価値が高い、国宝に指定されている甲冑を3領ご紹介します。

甲冑(鎧兜)に関する基礎知識をご紹介します。

赤韋威鎧

「赤韋威鎧」(あかがわおどしよろい)は、岡山県岡山市にある「岡山県立博物館」が所蔵する国宝の甲冑。

平安時代後期に作られたと推測される大鎧で、豪壮な見た目から実戦用に制作されたことが窺えます。

同時期に制作された大鎧の多くは、神社などへ奉納されたのち、補修などによって人の手が加えられましたが、本鎧にはそうした形跡がありません。そのため、本鎧は制作当初の姿を保つ貴重な史料として高い価値を持つ甲冑と言えます。

刀剣展示をしている博物館・美術館についてご紹介!

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赤糸威鎧(菊一文字の鎧兜)

「赤糸威鎧」(あかいとおどしよろい)は、「菊一文字の鎧兜」という通称で知られる青森県八戸市櫛引八幡宮」が所蔵する国宝の甲冑。

実戦用ではなく権威を示すために作られたと推測される大鎧で、大袖と兜に菊一文字の飾金物(かざりかなもの)が付いているのが特徴です。

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赤糸威大鎧(梅鶯飾)

「赤糸威大鎧(梅鶯飾)」(あかいとおどしおおよろいうめうぐいすかざり)は、奈良県奈良市にある「春日大社」が所蔵する国宝の甲冑。

「日本一優美な鎧兜」と称される大鎧で、実戦用ではなく神社へ奉納するために作られたと推測されます。

見どころは、随所に散りばめられた金物。梅の木に集まる鶯(うぐいす)や蝶(ちょう)、蜘蛛(くも)などの生き物が美しく彫刻されており、鎌倉時代末期に流行した威儀を示すための甲冑の特色が顕著に表れています。

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【関連サイト】
直江兼続 伊達政宗 岡山県立博物館 櫛引八幡宮 春日大社
甲冑(鎧兜)の基礎知識
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