日本刀を作る

日本刀に憧れを抱く人の中には、自分で作ってみたいと考えることがあるかもしれません。日本刀を作るには、どのようなことが必要で、どんな工程があるのでしょうか。

日本刀を作りたい人へ~刀匠になるためにやるべきこと~

初めの1歩は「弟子入り」から

日本の伝統工芸品として、長いときを経て受け継がれてきた日本刀。日本刀制作を行なっているのは、専門の職人である「刀匠」(とうしょう)です。

刀匠になるための第1歩は、文化庁からの「作刀承認」を得ている刀匠のもとに弟子入りすること。そしてこれは、刀匠になる第1関門でもあります。と言うのは、弟子を取ることに難色を示す刀匠がいるのも事実。日本刀が「武具」ではなくなった現代においては、日本刀の制作だけで食べていける人はほんのひと握り

弟子を取るということは、人ひとりの人生を預かることであり、師匠となる刀匠にとっても、それ相応の覚悟が必要になるからです。

刀匠の修行内容は、師匠によっても異なりますが、修行期間中は基本的に無賃金。最初から日本刀の制作方法のすべてを教えてもらえる訳ではなく、まずは掃除や「炭切り」が主な仕事になることがほとんど。「炭切り3年」と例えられるほどの厳しい修行に耐えかねて、脱落してしまう弟子があとを絶たないというのが現状のようです。

刀匠になるのに「作刀承認」が必要な理由

それでは、なぜ、このような修行が必要なのでしょうか。

その理由のひとつとしては、第2次世界大戦後しばらくの間、「武器」と見なされた日本刀の制作が禁じられた背景から、現代の刀匠が制作を許可されている日本刀は、「美術的」または「文化的」に価値がある物に限られているということ。そのような日本刀を作るには、修行によって日本刀の価値とはどういう物かをきちんと理解し、それを日本刀そのものに表せるだけの技術が必要です。

実際に、文化庁からの作刀承認を得るには、5年間の修行を積み、文化庁主催の「美術刀剣刀匠技術保存研修会」に参加しなければなりません。満4年の修行を経ていれば参加は可能ですが、研修会とは言っても、刀匠の技術を試される「審査会」の場。この研修会を無事に終了してようやく、刀匠として日本刀を制作することが認められます。

これによって世の中に粗悪品が出回ることを防ぎ、「美術工芸品」としての日本刀の価値を後世にまで伝えていくことができるのです。

焼き入れはなんのために行なう?

焼き入れとは日本刀作りの工程のひとつ

この頃では、ちょっと怖い意味で使われている「焼きを入れる」という言葉。もともとは、「たるんだ気持ちを引き締めさせる」という意味で使われていました。では、なぜ気持ちを引き締めさせることを「焼きを入れる」と言うのでしょうか。

この「焼き入れ」という言葉、実は、作刀の工程から生まれた言葉でした。真っ赤になるまで高温に熱した鉄をカンカンと打って、棒状に延ばしている刀鍛冶を一度は見たことがあると思いますが、あのあとに行なわれる工程です。

焼き入れ

焼き入れ

日本刀の形に鉄を延ばしたら、その上に「焼刃土」(やきばつち)という土を乗せ、土が乾いたら再び炉に入れます。さらにこれを水槽の中に入れると、急激な温度低下で鉄に変化が。

ここで日本刀に生じる文様が「刃文」(はもん)です。焼き入れは、刃文を入れるために欠かせません。そして、やわらかく「なまくら」だった日本刀が、焼き入れによって、硬くなることから、人間の気持ちを引き締めさせるときにも「焼きを入れる」と言われるようになりました。

また、日本刀の大きな特徴である「反り」も、この焼き入れのときに生じるのです。
反りについては、あの坂本龍馬が携えていたという愛刀「陸奥守吉行」(むつのかみよしゆき)にこんなエピソードがあります。

龍馬亡きあと、この日本刀を受け継いでいた、子孫の坂本弥太郎さんの家で火災が発生。なんと、その火事によって陸奥守吉行の反りがなくなり、真っ直ぐな状態に戻ってしまいました。つまり、火災によって日本刀に熱が加わったことで、焼き入れで生じた反りがなくなってしまったのです。

陸奥守吉行

陸奥守吉行