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長野県の郷土料理と言えば、一番に名前が挙がるのが「信州そば」ではないでしょうか。長野県は蕎麦の原料となる「そばの実」の栽培にとても適した土地のため、長野県内の畑では蕎麦の生産が盛んに行われ、信州そばの名店と言われる蕎麦屋も沢山あります。その中でも、長野県上田市にある老舗の蕎麦屋「刀屋」(かたなや)は、長野県上田市の観光協会でもおすすめされるほどの超人気店。県外からも多くの観光客や蕎麦愛好家が訪れ賑わっています。信州そばについて触れるとともに、おいしい信州そばのお店として人気を博している老舗の蕎麦屋「刀屋」をご紹介します。

長野県の郷土料理「信州そば」

長野県は、「信州そば」発祥の地として全国的に知られていて、長野県内には、名店と呼ばれる蕎麦屋が数多くあり、蕎麦打ち体験ができる施設も多数存在。

また、毎年10~11月は秋そばの収穫時期とあって、長野県内各地で「そば祭り」のイベントが開催されています。

なぜ、信州そばが長野県の郷土料理として全国的に知られるようになったのでしょうか。

信州そばとは

185_戸隠そば
戸隠そば

長野県内で生産された蕎麦を総称して、信州そばと呼びます。

「蕎麦自慢はお里が知れる」とは、昔から信州に伝わる文言ですが、つまりは、どの貧村の出身かが蕎麦で分かってしまうという少し皮肉の付いた言葉。それだけ長野県は、蕎麦文化が根付いているのです。

ひとことで信州そばと言っても、その種類は多岐にわたります。例えば、蕎麦の実を殻まで引き込んで作る「田舎そば」や蕎麦の実の真ん中を使って作る「更科蕎麦」(さらしなそば)。そして信州そばの中でも特に有名なのが、「戸隠神社」(長野県長野市)を起源とする「戸隠そば」(とがくしそば)ではないでしょうか。

戸隠そばは、日本三大蕎麦(島根県出雲そば、岩手県わんこそば)のひとつにも数えられ、戸隠の伝統工芸「根曲がり竹細工」のざるに水切りをせずに盛られるのが特徴で、冷たくておいしい水と一緒に風味の良い蕎麦を味わえます。

長野県は蕎麦の生産に適した土地

長野県は、涼しい気候で昼と夜の寒暖差がとても激しく、さらには平地よりも山間地が多い土地なので、小麦や米といった穀物の栽培には不向きです。

しかし、蕎麦の原料である「そばの実」は、このような厳しい気候条件下においても強く育ち、霧が霜の発生を抑える標高の高い高冷地で育てられた蕎麦は、澱粉が成熟したとてもおいしい良質な蕎麦になることから、長野県内の多くの高冷地で栽培されるようになりました。

2019年(令和元年)時点で、長野県内の蕎麦農家の数はおよそ3400軒。長野県の蕎麦生産量はおよそ3,350トンで、全国各地に出荷されています。

このように、長野県は蕎麦の栽培に非常に適した土地であり、昔から蕎麦作りの文化が根付いている土地なのです。

長野県と山梨県「そば切り発祥の地」論

蕎麦の発祥地については、現在でも諸説あり、はっきりと定められていません。

その中でも最も有力とされているのが、長野県本山宿(長野県塩尻市)説と、山梨県天目山栖雲寺(てんもくさんせいうんじ:山梨県甲州市大和町)説の2つ。

蕎麦が日本に伝わったのは奈良時代より前とされていますが、それまで日本では、脱穀したそばの実を雑穀と混ぜて食べる「そば米」や、そば粉をお湯や水で溶いて茹でた「そばがき」として食べるのが一般的でした。

その後、現在の「ざるそば」のように、細く棒状に切り分けられた「そば切り」が誕生し、全国に広まっていきました。そのそば切りの蕎麦発祥の地は、長野県と山梨県、一体どちらなのでしょうか。とても気になるところですね。

山梨県をそば切り発祥の地とする根拠

山梨県の食と聞くと、「ほうとう」が思い浮かぶ方も多いと思います。しかし、実は山梨県にも蕎麦文化が根付いていて、セリと一緒に茹でる「せりそば」や、千切り大根と一緒に食べる「大根そば」が郷土料理になっている地域も多くあり、そば切り発祥の地として知られているのです。

また、山梨県の公式サイトでは、「特選やまなしの食47品」の中で、ほうとうや酒まんじゅうなどの名産品と一緒に、「手打ち蕎麦」を紹介。現在、山梨県内にも多くの蕎麦の名店が存在しているのです。

山梨県をそば切り発祥の地とする根拠のひとつに、1697年(元禄10年)頃から執筆され始めた尾張藩(現在の愛知県)の国学者「天野信景」(あまのさだかげ)による随筆書「塩尻」があります。

「蕎麦切は甲州よりはじまる」と始まる一節に、天目山栖雲寺の参拝者にそば切りの蕎麦が振舞われたとの記述があるのです。

これは、栖雲寺の開祖・業海和尚(ごっかいほんじょう)が中国での修行を終えて帰国し、1348年(正平3年)に栖雲寺を開いた際、食も修行の内として、蕎麦作りを伝えたからだと言います。

長野県をそば切り発祥の地とする根拠

長野県をそば切り発祥の地とする有力な根拠は、3つあります。

ひとつ目の根拠は、1789年(寛政元年)、信州で行商人として働いていた清右衛門(せいえもん)という人物が、現在の東京都港区麻布永坂町に「信州更科蕎麦処 布屋太兵衛」を開きました。この店こそ「信州そば発祥の店」であるとされています。この頃にはすでに、信州そばの店として、そば切りの蕎麦を振舞っていたのです。

2つ目の根拠として、史料にも残っている記録があります。1645年(正保2年)に発表された俳諧論書「毛吹草」(けふきぐさ)には、「そば切りは信濃国(しなののくに:現在の長野県全域)の名物。当国より始まる」と記述があります。

また、江戸時代中期の俳人である「森川許六」(もりかわきょりく)による、1706年(宝永3年)出版の「風俗文選」にも、「蕎麦切りといっぱ、もと信濃国本山宿から出て、普く国々にもてはやされる」と書かれています。

長野県塩尻市は、かつて中山道木曽路の入り口にある宿場町「本山宿」だった場所。この史料から、そば切りが長野県から全国に知れ渡り、広まっていたことが分かりますね。

185_本山宿
本山宿

3つ目の根拠は、1992年(平成4年)に、長野県の郷土史研究家である関保男(せきやすお)氏が発表した史料によるものです。

関保夫氏は、長野県西部「大桑村」(おおくわむら)にある「定勝寺」(じょうしょうじ)に残されていた、1574年(天正2年)に書かれたとされる「定勝寺文書」という書物の中に「ソバキリ」の文字が記されている文章を見付け、世間に公表しました。

この文書によると、当時、定勝寺の仏殿修理が完工されたお祝いの品としてそば切りが贈られ、定勝寺の「金永」という人物が客人に提供したことが記されていたのです。

長野県と山梨県の蕎麦発祥地をめぐる議論は、現在でも結論が出ていません。どちらの根拠も有力であるように思えて、結論を出すのは難しそうに感じます。ただ、両県ともに地域ごと、様々な種類のおいしい蕎麦を生産していますので、長野県と山梨県の蕎麦の食べ比べをしてみるのも楽しいのではないでしょうか。

おいしい信州そばのお店「刀屋」

185_おいしい信州そばのお店「刀屋」
刀屋

長野県の郷土料理として、昔から親しまれてきた信州そば。長野県内には多くの人気蕎麦屋があります。

そんな数ある名店の中でも、長野県上田市にある「刀屋」(かたなや)は、おいしい信州そばの老舗店として、大変な人気を博しています。

ここからは、おいしい信州そばの名店・刀屋について見ていきましょう。

店名「刀屋」の由来は刀鍛冶

長野県内にある名店と呼ばれる信州そば屋の中でも、ひときわ人気を博している老舗・刀屋。とても珍しい店名だと感じる方も多いと思います。この刀屋という店名は、先祖が「刀鍛冶」(かたなかじ)だったことに由来しています。

刀鍛冶とは、日本刀を作刀する職人のこと。作刀の始まりは平安時代頃からと言われており、日本独自の伝統工芸です。これまで、刀鍛冶によって数々の名刀と呼ばれる日本刀が作刀されてきました。

そして、その技術や手法は現在にも継承されており、刀鍛冶は日本が世界に誇る美術工芸品制作の担い手なのです。

また、本来「刀屋」と言うと、日本刀を専門に扱うお店のことを指します。刀屋は、「古物商許可書」を持つ古物店で、さらに、日本刀を知り尽くした「刀剣評価鑑定士」のいる古物店は、日本刀の売買や鑑定をしてもらう際に、非常に心強い存在となります。

日本刀の鑑定や売買をお考えの方、また、日本刀にご興味のある方は、ぜひ日本刀のスペシャリストである刀剣評価鑑定士のいる刀屋を訪れてみて下さい。

刀屋が人気の理由

長野県上田市は、戦国武将「真田幸村」(さなだゆきむら)ゆかりの地としても有名。毎年、多くの歴史ファンや観光客が蕎麦屋・刀屋を訪れ、時には行列を作るほどの大変な賑わいを見せています。

真田家を描いた「真田太平記」の作者である作家「池波正太郎」(いけなみしょうたろう)も、刀屋に何度も通ったひとり。著書「散歩のとき、何か食べたくなって」の中でも、刀屋の蕎麦作りの技術や味を絶賛しています。

刀屋がこれだけ人気を博している理由のひとつとして、良心的な値段にも関わらず、蕎麦のボリュームが凄いことにあります。赤い甲冑である「真田の赤備え」を想像してしまうような、赤色が華やかなざるに盛られた蕎麦です。

初めて刀屋を訪れた方には、大盛りでの注文を遠慮してもらっているようです。何故ならば、大盛りともなると、蕎麦の量が1㎏ほどになり、どうしても残してしまう人が多いという理由からだとか。

「信州そば切りの店」認定店

刀屋は、JR上田駅から歩いて5分ほどの場所にあります。上田駅からまっすぐ伸びた中央通りを進み、「松尾町」の信号を右折して進むと、左手にあるのが刀屋です。

青い瓦屋根の懐かしい雰囲気のある建物で、店前に掛かる大きな簾が特徴的。専用駐車場に停まる車には、県外のナンバープレートもあり、県内外から多くの蕎麦愛好家が刀屋を訪れます。

そして、お店には「信州そば切りの会」に認定された「信州そば切りの店」の看板も。認定の条件は、長野県産のそば粉を使っていて、繋ぎの割合が30%に保たれている手打ちそばの店であること。信州そば切りの店の認定店は、2021年4月現在で65店舗あります。

また、「信州上田観光協会」の公式サイトでは、刀屋がお勧めの信州そば屋として紹介されており、老舗の名店刀屋は、味もお店も信頼できる「信州そば屋」として認められている証拠です。

刀屋の人気メニュー

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盛りそば

刀屋の人気メニューと言えば「盛りそば」です。

蕎麦猪口、徳利、薬味、漬物が付いた「つけ汁セット」を注文するのがこの店の定番。薬味には、刀屋おすすめの大根おろしも注文できます。普通盛りでも、男性ひとり分として十分なボリューム。太めの蕎麦はコシがあり、つけ汁に絡めて食べると、風味が口の中に広がり絶品。気になるお値段は、小盛り600円、中盛り650円、普通盛り700円、大盛り900円と、かなり良心的。

この盛りそばと肩を並べる刀屋の人気のメニューが「真田そば」。真田そばは、刀屋秘伝の味噌ダレに付けて食べる蕎麦です。かつおぶし、なめこ、味噌が入っている器に汁を入れ、薬味の大根おろしと合わせて食べるのがおすすめ。この味噌ダレが蕎麦に良く合いおいしいと評判で、刀屋の名物メニューのひとつになっています。真田そばは1050円と納得のお値段。

また、甘い味噌を使ったくるみダレで食べる「くるみそば」も、刀屋の人気メニューのひとつ。長野県産のくるみをすり潰して入れた甘味噌ダレがおいしいと常連客にも大好評。甘目の味付けを好む方には、特におすすめです。くるみそばも真田そば同じく、お値段は1050円。

まとめ

長野県は、信州そばが郷土料理として大変有名であり、全国各地から蕎麦の愛好家や観光客がおいしい信州そばを求めて訪れます。

県内には、数多くの信州そばの名店が存在していますが、長野県上田市にある老舗蕎麦屋・刀屋は、そのボリュームや太めでコシのある蕎麦の味で多くの食通を唸らせる、満足度の高い名店です。

長野県上田市を訪れる際は、おいしい信州そばを味わいに刀屋を訪れてみてはいかがでしょうか。

【関連サイト】
真田幸村(真田信繁) 刀屋