175_埋忠展

「大阪歴史博物館」(大阪府大阪市)で開催中の日本刀特別展「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄」へ行ってきました!本特別展は、2020年(令和2年)10月31日(土)から2020年(令和2年)12月14日(月)まで開催予定。埋忠一門が制作した刀剣や鍔などの貴重な作品群から、埋忠一門にかかわる名刀の数々が紹介され、連日多くの刀剣ファンが訪れています。

2021年(令和3年)1月9日(土)からは東京の「刀剣博物館」(東京都墨田区)において、2021年(令和3年)2月21日(日)まで開催予定です。

埋忠展の様子

大阪歴史博物館」(大阪府大阪市)で開催中の、埋忠一門にかかわる刀剣や刀装具が一堂に会する今回の特別展「埋忠〈UMETADA〉桃山刀剣界の雄」。本特別展は、刀工や刀身彫刻師、金工師として名を馳せた埋忠一門の多彩な活躍や、刀の仕立て直しや刀剣類の記録など、活動の広がりを確認することができるとても充実した内容の展覧会です。

また、人間国宝に認定された現代刀匠である2代目「月山貞一」(がっさんさだかず)による「埋忠明寿」(うめただみょうじゅ)の写しが展示されるなど、見どころが満載。華やかな埋忠一門の世界は、貴重な作品群と多くの刀剣好きの人びとで賑わいを見せていました。

11月7日(土)の記念フォーラムには、現代刀匠である「月山貞利」(がっさんさだとし)氏と、刀身彫刻師の「岩崎範光」(いわさきのりみつ)氏、「刀剣博物館」(東京都墨田区)の「久保恭子」(くぼやすこ)氏が参加。刀身彫刻の素晴らしさや歴史、刀身彫刻に関する豆知識などが語られ、日本刀ファンにはたまらないものとなりました!

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埋忠展の見どころ

埋忠展の見どころは、埋忠一門の多彩な活動と埋忠一門が記録した「埋忠銘鑑」にある名刀や刀装具の展示。時代ごとの作風の変遷や、刀工や彫刻師による刀身彫刻の違いを比べて鑑賞することができるのです。

また、「短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長拾三年三月吉日 所持熊谷清六」のVR展示は、埋忠展の公式サイトから観ることが可能となりました。刀身を360°細部まで観ることができるので、ぜひ鑑賞してみて下さい!

96_短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 所持熊谷清六

短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長拾三年三月吉日 所持熊谷清六

なお、埋忠展の会場内は全面撮影禁止のため、文字のみで見どころをお伝えします。実物は、みなさまご自身の目で確かめて下さい!

埋忠明寿の作風

埋忠展に出品されている作品の中でも、刀工と刀身彫刻師、金工師を兼任する埋忠一門の祖となる埋忠明寿の貴重な作品群が、本特別展の目玉のひとつ。

埋忠明寿の特徴は、なんと言っても精緻な刀身彫刻の華やかさにありますが、片切刃造(かたきりはづくり:片面が平造で片面が切刃造となった造込み)で幅広の刀身も、埋忠明寿の作刀に良く見ることができます。

175_片切刃造

片切刃造

なお、埋忠明寿の活動は作刀のみに留まらず、精緻で華やかな意匠のや、繊細に輝く(はばき)の制作も多く手がけ、おおらかに花開いた桃山文化の特徴を体現しました。

埋忠明寿の作刀は、「刀剣ワールド財団」が所蔵している短刀 銘 山城国西陣住人埋忠明寿 慶長拾三年三月吉日 所持熊谷清六のように、現存する物のほとんどが短刀

しかし、本特別展では、唯一現存しているとされる埋忠明寿の手による太刀を鑑賞することができたのです!

埋忠明寿の作刀の中で唯一現存する太刀

「山城国西陣住人埋忠明寿(花押)/慶長三年八月日他江不可渡之」は、埋忠明寿の他の作刀に見えるように、幅広の刀身を持った太刀です。反りは浅く、穏やかな「湾れ」(のたれ)の刃文はゆったりとした印象を抱かせます。

一際目を引くのは、佩表の櫃の中に彫られた不動明王像と、佩裏にある見返り龍の浮彫り。冴え冴えとした彫刻の美しさがはっきりと鑑賞することができます。

しかし、本太刀が大阪会場で観られるのは、11月23日まででした。東京会場でも展示予定のため、これから本太刀を鑑賞したいと思っている人は、2021年(令和3年)1月9日より開始される刀剣博物館(東京都墨田区)での巡回展で観ることができます。

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埋忠一門は、桃山時代から江戸時代にかけて、鍔工としても多大な評価を得た一派です。

埋忠明寿は、精緻で華麗な刀身彫刻を施し、日本刀の芸術的側面を高めただけに留まらず、鍔工としても大活躍。「琳派」などの文化から影響を受けた色とりどりの様々な種類の鍔は、桃山で花開いた華やかで荘厳な文化を良く表していたと言えます。 

例えば、重要美術品に指定されている「蔦文鍔 銘 埋忠明寿」は、真鍮地に赤銅(もしくは黒味銅)と銀、素銅を用いて制作された鍔。にじんだ風合いが絵画のたらし込みのような作風です。

また、「菊花透十二支図鍔 銘 山城国西陣住 埋忠七左衛門」や「反物図象嵌透鍔 銘 梅忠七左衛門 橘重義作」、「松皮菱透花象嵌鍔 銘 埋忠」などに見られるように、菊の花や十二支、反物や宝尽、松など、様々な意匠で飾られた鍔は、芸術作品として遜色ない美しさを誇っていました。

175_塩川来国光の鎺

鎺とは、刀身と鍔に接する部分にある筒状の金具のことを指します。これまで刀剣の附属品として焦点の当たることが少なかった鎺ですが、埋忠一門が名刀の鎺を制作していたことから、本特別展では展示品のひとつの目玉として鎺が紹介されました。

実際鑑賞してみると、埋忠一門が制作した鎺は、名刀にふさわしい繊細な造りをした物が多く、格調高いその輝きはうっとりしてしまうほどの美しさがあります。なお、埋忠展のチラシやチケットなどに見られる金色の背景は、鎺の精緻で美しい質感を模した、こだわりのデザイン。

また、刀剣ワールド財団が所蔵している「短刀 銘 国光」(名物 有楽来国光)は、東京会場のみの展示となり、大阪会場には有楽来国光の鎺のみが展示されています。

96_短刀 銘 来国光(名物 有楽来国光)

短刀 銘 来国光(名物 有楽来国光)

埋忠展で必見の貴重な刀剣を紹介!

埋忠展で見どころとなるのは、埋忠一門の作品だけでなく、埋忠銘鑑に記載された名刀の数々もそのうちのひとつ。

埋忠一門は、長船派の名匠「長光」(ながみつ)や「景光」(かげみつ)に代表される、華やかな備前伝の剣や、「江戸三作」に数えられる「正宗」など、本阿弥家が鑑定した多くの名刀の入れや磨上げ、鎺などの刀装具の制作を行なった日本刀を記録し、埋忠銘鑑(埋忠刀譜)として残しました。

その中でも、本特別展では江(ごう)の刀を3振揃って鑑賞することができます!展示されたのは
「刀 金象嵌銘 義弘本阿(花押)本多美濃守所持」(名物 桑名江)
「刀 金象嵌銘 天正十三十二月日江本阿弥磨上之(花押)所持稲葉勘右衛門尉」(名物 稲葉江)
「金象嵌銘 江磨上 光徳(花押)」(名物 北野江)の3振。

この3振を作刀した「郷義弘」(ごうのよしひろ:江義弘とも)は、いずれの作品にも銘を入れず、現存するすべての刀が無銘の極めで、なおかつ、若くして亡くなった刀工であることから、かつては「江とお化けは見たことがない」と言われるほど珍重された名刀です。作風は、いずれも地刃が明るく冴え、相州伝風の姿をしています。

175_(名物 桑名江)刀 金象嵌銘 義弘本阿(花押)本多美濃守所持

刀 金象嵌銘 義弘本阿(花押)本多美濃守所持(名物 桑名江)

また、大阪会場でのみ展示される、埋忠展の序章「埋忠の登場まで―古刀から慶長新刀へ」では、国宝「太刀 銘 国行」(明石国行)を展示!本太刀は号を明石国行と言い、鎌倉時代に活躍した山城伝の名工「来国行」(らいくにゆき)の手による作品です。

細身の刀身には広直刃調に丁子を交えた刃文と、盛んな刃中の働きにより、流麗な印象が与えられます。表裏には三鈷剣の浮彫りが入れられており、華やかな慶長新刀以前の刀身彫刻を確認することができるのです。

175_(明石国行)太刀 銘 国行

太刀 銘 国行(明石国行)

埋忠一門のファンにとっても、刀剣好きの人びとにとっても、本特別展はとにかく垂涎ものの展示となったことに間違いありません。

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特別記念フォーラムに行ってきました!

今回、11月7日(土)に開催された特別記念フォーラム「刀剣彫刻を語る」に行ってきました!このフォーラムは会期中に1度しかないため、ここではフォーラムに行けなかった人にも分かるように、どのようなことが語られたのかレポートをします!

今回の特別記念フォーラムは、埋忠展に出品されている埋忠明寿の作刀や、刀身彫刻への理解をより一層深めて作品を鑑賞するためのもの。

奈良県の指定文化財保持者である刀匠・月山貞利氏をはじめ、刀身彫刻師、金工師である岩崎範光氏、刀剣博物館学芸員である久保恭子氏を交え、刀身彫刻の歴史や手順など、刀身彫刻にまつわる様々な話を伺うことができました!

月山貞利氏による基調講演では、鍛刀や刀身彫刻の手順についての説明がされ、刀匠の仕事ぶりを拝見できるビデオを鑑賞。刀身彫刻をする際には、鍛冶押し(かじおし:刀匠が作刀中に施す研ぎのこと)のあとで松脂に刀を固定して取り掛かることや、彫刻をするための刀は作刀段階からあらかじめ決まっており、彫刻する際に刀身が硬くなりすぎないように焼きを調整するなど、刀匠ならではのお話が伺えました。

月山貞利氏は作刀の際に、日本の精神性の象徴を意識しているとのこと。長らく続く月山派の当主として「折れず、曲がらず、よく切れる」ことも意識し、日本刀の美や日本の魂を繋いでいきたいと締め、刀剣に対する思いも伺うことができた貴重な講演となりました。

続いて久保恭子氏による講演の内容は、刀身彫刻の伝播や変遷、傾向などについて。本特別展に出品されている「山伏国広」にも見ることができるように、刀身彫刻は不動明王や不動明王の化身となる「倶利伽羅龍」、梵字などが多く、修験道の山岳信仰から発生しているのではないかとする、大変興味深い説が提示されました。また、刀身彫刻の特徴により、作刀地域を特定することもできるそうです。

埋忠明寿の特徴である「玉追い龍」の刀身彫刻については、1598年(慶長3年)の方が写実的・霊獣的な側面があるのに対し、1607年(慶長12年)には、下顎が突き出して舌を見せたデフォルメされた龍となっていることから、埋忠明寿の作刀も時期によって龍の作風が変化していることが分かりました。

なお、今回の特別展開催により発見されたのは、埋忠明寿の玉追い龍にはパターンがあること。そのパターンは、ツンと立った宝珠の場合はしっぽが丸まっており、一方、横に潰れた宝珠の場合は、指表の龍だけ舌を出し、しっぽはそのまま垂れていることなどが挙げられます。

特別展には両パターンの作刀が展示されているので、鑑賞する際にはポイントのひとつとして観てみて下さい!

この特別記念フォーラムにおいて一際印象深かったのが、刀匠が彫刻を施す場合と彫刻師が施す場合では、方法や順序、技術的な勝手が違うこと。例えば、刀匠は作刀の過程で彫刻をするため、やわらかい刀身に鏨(たがね)を入れて彫っていきますが、彫刻師はすでに完成された刀に彫刻をしていくことなどです。

彫刻師の岩崎範光氏は、彫刻をする際の硬さなどで、刀剣の出来や時代などを鑑することができるとお話しされました。

なお、フォーラムに寄せられた質問に答える際には、「マンタ」の彫刻を依頼された経験についてお話しされた場面も。会場に笑いが起こるなど、終始和やかな記念フォーラムとなりました。

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